個人再生の申請前に車の名義変更は許される?
はじめに
個人再生をすると、所有しているローン支払い中の車は基本的に手放さないといけません。これは、車がどうしても必要な人にとって、死活問題です。
ですので、これを逃れるために、個人再生の申請前に車を家族のものに名義変更して、車の処分を免れようとする人がいます。
この、一種のズルともいえるやり方は、個人再生のルールに違反しないのでしょうか。
「個人再生の前に車を名義変更することは可能ですが、あまり意味がありません」
結論から言うと、このやり方は個人再生のルールに違反しません。なぜなら、個人再生には財産の譲渡を禁じるルールはないからです。では、私もやってみようと思われた方、ちょっと待ってください。
実はこれをやっても、債務者には何のメリットもないのです。なぜメリットがないのか、それは個人再生には、「再生の直前に行った財産の処分、譲渡は、裁判所に申告しなければならない」というルールがあるからです。
このルールがある以上、仮に個人再生の申請前に誰かに車を譲ったとしても、それを申告しなければなりませんし、申告した分の財産は、誰かに譲ったものでも自分の資産として計算されますので、結果として返済すべき金額が増えます。
つまり、個人再生の前に車を名義変更しようがしまいが、その車が自分の財産として認定される以上、自分の返済総額は変わらないのです。
なので、個人再生の前に車の名義変更は可能ですが、それをやっても意味がないということになります。
「もし裁判所に黙っていたらどうなるか」
では、個人再生をする前に車の名義変更をして、それを裁判所に申告しなければいいのではないか、そう考える人もいるでしょう。
確かに、それをやることは可能ですが、それをやって裁判所にばれた場合、財産の隠匿とみなされて、個人再生計画が棄却されたり、不認可になってしまうので、債務の減額そのものがなくなります。(民事再生法241条)
こうなると、債務整理そのものができなくなるので、財産の隠匿はとても割にあいません。ですので、車を名義変更した場合、きちんと裁判所に申告するのがよいでしょう。
「車の価値が低いと、資産価値がないと見なされることもあります」
車を名義変更しようがしまいが、裁判所に申告する義務があること、そして裁判所に車の所有(あるいは名義変更すると)その車の価値に応じて、返済額が増えることは、先に述べました。
ですが、これには例外があります。車の価値があまりに低い場合、資産と見なされず、返済額が増えない場合があるのです。
具体的には、車の価値が20万円を下回ると、資産と見なされないことが多いですが、仮に車の価値が40万、50万ほどと見積もられたとしても、返済額はあまり増えません。
個人再生の場合、自己破産と違って、車を処分する必要はないので、車を持つことによるデメリットは、車の価値に応じて返済総額が増えるだけです。
ですので、個人再生をする場合、きっちり車の所有を裁判所に申告しておきましょう。車の所有を黙っていて、後で財産隠匿として個人再生計画そのものが潰されるよりも、毎月の支払額が増えるほうが、よっぽどマシです。
ローンを支払い終えた車は個人再生をしても手放す必要はありません。
ローン支払い中の車は基本的に手放さないといけません。ただし、仕事上必ず必要な場合や、体が不自由で生活する上で必ず必要な場合は、残す方法もあり、条件によってはローン支払い中の車でも残せる可能性があります。ケースによって異なるので、弁護士と相談しながら個人再生を進める必要があります。
※担保権消滅許可申請を行う方法。別除権協定を締結し、担保権の実行を行う方法など。
「個人再生と名義変更まとめ」
個人再生をする前に、ローン支払い中の車の名義変更をするかしないかは、個人再生をする人の自由です。
ですが、再生直前に財産を譲渡、処分した場合、それを自分の資産として裁判所に申告する義務が債務者側にあるので、車の名義変更をしても、毎月の返済額は変わりません。
なので、車の名義変更をすること自体に意味がありません。仮に名義変更をしたことを黙っていた場合、(つまり名義変更した車は自分の財産ではないとごまかしをした場合)裁判所に財産隠匿と見なされて、個人再生計画そのものを棄却されてしまうので、妙なことは考えず、正々堂々と再生計画を受けたほうがいいでしょう。
もしローン支払い中の車を手放したくない場合は、名義変更ではなく、他の方法を検討する必要があります。
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