個人再生と退職金について

個人再生と退職金!個人再生をする時退職金はどのように影響するのか?

個人再生と退職金の概要

個人再生をしたら退職金が貰えなくなるとか、個人再生をしたら退職金分のお金を裁判所に支払わないといけないとかそういうことは一切ありません。個人再生では債務者の財産の合計金額によって、個人再生の返済金額が変わることがあります。

 

申立て時点で退職金が貰える見込みのある方は、「退職金見込み額証明書」を裁判所に提出する必要があります。その書類によって現時点でいくら退職金が貰えるのかその見込みがわかります。その見込み額の1/8が現時点での財産として扱われることになります。ようは「個人再生の返済額を正確に把握するために退職金見込み額証明書を裁判所に提出しなければいけない」ということです。

 

この退職金見込み額証明書は会社に知られずに発行が可能です。その方法についてはあとで詳しく解説していきます。

 


個人再生(小規模個人再生)の返済額は上記の通りです。ただし最低弁済額が清算価値を上回った場合は清算価値が返済額となります。(民再174条2項4号、231条1項)。

 

清算価値とは債務者がもっている財産の合計値のことを言います。具体的には「貯金額(預金)」「手持ちのお金(現金)」「車を持っている場合は現時点での評価額(もし売却した場合の査定額を複数の業者に出してもらう)」「不動産を持っている場合はその評価額(査定額)」「現時点での退職金見込み額の1/8」「保険を契約している場合は現時点でもし解約した時の返戻金」が財産として扱われ、これらの額の合計が清算価値となります。

 

これらの価値を証明するための書類を裁判所に提出する必要があります。ようは最低弁済額よりも清算価値(いまあなたが所有している財産の合計値)が上回った場合、所有している財産分の額は返済してくださいね、ということです。財産の価値を明確にするために退職金見込み額証明書を裁判所に提出する必要があります。

 

退職金を既に受け取っている場合

退職金を既に受け取っている場合は、それは「退職金」という性質はなくなり「現金もしくは預金」となっているはずです。その預金や現金はすべて清算価値として計算されます。

 

個人再生をすると、退職金は受け取れないのか?

個人再生をしても、退職金は問題なく受け取ることができます。あくまで計算上の話で、清算価値によって個人再生をした時の返済額が変わることがあるので、そこが問題になるだけです。
ようは「手続き時点での退職金見込み額の有無によって、個人再生の返済額に影響がある可能性がある」だけで、退職金が受け取れないわけでも、退職金が減らされるわけでもありません。

 

 

退職金見込額証明書を会社に怪しまれないで発行してもらうには?

個人再生をする時に必要な書類で、会社から発行をお願いしないといけないのは「直近2ヵ月分の給与明細書」と「2年分の源泉徴収票」と「退職金見込み額証明書(勤務年数が5年以上の方のみ)」の3つとなります。

 

給与明細書については毎月会社から送られてくるはずなので手元にある方は多いと思います。源泉徴収票については年末に会社から自宅に送られてきますから手元にある方が大半です。もし手元にない場合でも勤務先の給与担当係に再発行をお願いすれば問題なく再発行してくれます。この2つについては再発行をお願いしても怪しまれることはありません。

 

やはり問題になるのが退職金見込み証明書です。一体何に必要なのだと聞かれる可能性があります。当然素直に個人再生をすると話す必要はありません。話してしまうと人間関係がギクシャクしてしまうかもしれませんし、仕事に支障がでる可能性があります。

 

別の理由を言って発行してもらうのが無難です。この場合の理由として一番余計な勘ぐりをされ難いのが、住宅ローンを引き合いに出すことです。

 

例えば「住宅ローンを組もうか考えていて、その審査の為に一応手元に用意しておこうと思う」という理由であれば、誰も個人再生の為だとは思わないでしょう。

 

また、「親の連帯保証人になるので、その審査に必要になった」「子供の奨学金で人的保証の連帯保証人になるため」といった理由でも問題はありません。他には「嫁に言われて将来設計のため(老後のため)に確認しておきたいから」といった理由でも構いません

 

別の方法としては以下のものがあります。

  • 就業規則など退職金の支給規定について書かれた書類が手元にある場合(労働者であれば職場から貰うことができる)は、それと一緒にその計算の根拠となる書類(勤続年数が書いてある書類など)を提出する
  • 会社で退職金規定をみることができない場合は労働基準局へ行って、閲覧・謄写させてもらう(基準局に相談する)

 

中には正社員雇用でも退職金という制度がない会社もあります。このような会社の場合は、退職金がないということを証明する書類が退職金見込額証明書の代わりに必要になります。これは退職金見込額証明書と同様に経理などの担当部署で発行してもらえるので、この場合も同様に、住宅ローンや連帯保証人になるために必要などの理由を付けて発行してもらいましょう。

 

退職金見込み証明書は会社に個人再生だと知られずに発行してもらうことができます。それか退職金規定をみてそれを元に計算することもできますし、それがない場合は労働基準局へ行って、閲覧させてもらうことができます。

 

担当の弁護士がいる方は適切な方法を教えてくれるので話を聞くとよいです。