自己破産その後の生活

自己破産をするとその後どのような生活が待っているか?

自己破産をすると、その後どのような生活が待っているのか、これは意外に知られていません。

 

ドラマのように、かたっぱしから家具を差し押さえられて貧乏生活を送るのか、それとも、以前と変わらない生活を送ることができるのか、それは人によってそれぞれですが、基本的には以前と、正確に言えば借金問題に悩んでいた以前よりもいい生活が出来ます。

 

それは具体的にどんな生活なのか、それをこれからご紹介します。

 

自己破産後の生活

自己破産をする人は、多重債務者が多く、返済が困難で、財産を持っていないことが多いです。自己破産をするには「支払い不能状態」であることが必要ですから、その場合、自己破産前と自己破産後で生活がガラリと変わることはありません。

 

自己破産後はこれまでの借金は一切免除されますから、取り立てされることはありません。自己破産は債務者の財産はすべて売却されますが、99万円までの現金と生活に必要な財は手元に残せます。

 

生活に必要な財とは「家財道具」や「生活用品」のことで、29インチ以下のテレビ、パソコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、ベッド、掃除機、食器棚などです。これらは差し押さえ禁止となっています。

 

また、車に関しても売却しても20万円以下にしかならないと見積もられたら、手元に残ります。

 

家賃を毎月遅れなく支払っている場合は、そのままマンションアパートに住み続けられますし、自己破産をしたからといって仕事をやめることはありません(そもそもほとんどの場合で職場に自己破産したことが知られることはありません)

 

引っ越しや旅行(国内・海外)も自由にできます。

 

自己破産について以下のようなデマが流れていますが、実際そのようなことはありません。
・戸籍や住民票に記載されません
・自己破産をしても年金も生活保護も受けられます
・選挙権がなくなることはありません
・自己破産後に取り立てをする業者はいません
・家族や親せきが取り立てされることもありません
・仕事はクビになりません

 

自己破産後の生活で気がかりなのが「ブラックリスト」と「官報」だと思います。

 

自己破産後は信用情報機関に事故情報が載りますから、それが消えるまでの5年間〜10年間は新しい借金ができません。ちなみに事故情報は金融機関や貸金業者が新規客の信用を確かめるために照合する情報で一般人が見ることはできません。

 

新しい借金とは、クレジットカード、サラ金、自動車ローン、住宅ローンなどです。これらは利用できません。つまり破産後は借金のしない生活を5年〜10年過ごさないといけません。住宅ローンや自動車ローンは銀行からの借入となるので破産後10年間は利用できません。消費者金融やクレジットカードからの借金は民間からとなるので最短で破産後5年で利用ができるようになります。

 

もう一つは「官報」です。自己破産をすると、官報に破産をした事実が掲載され、その情報は永久に残ります。ただし、官報を一般の方が見る機会はほとんどありません。官報が見れるのは「各都道府県に1か所ある販売店で官報を実際に購入し、リアルタイムで破産者の名前を見つける」か「インターネット官報で月額サービスに入って、名前の検索をするか」のどちらかです。

 

官報には破産の裁判内容の他に、法律・政令等の制定・改正の情報や,個人再生・相続等の裁判内容が掲載されます。あなた以外にもたくさんの破産者情報がのっていますし、それ以外にもたくさんの情報がつまっているのです。

 

その中でリアルタイムで特定の人物を見つけるのはほぼ不可能です。

 

インターネットから名前検索をする場合は、複雑な手続きを経て、お金を支払わないといけません。

 

ほとんどのケースで官報から破産をした事実を知られることはないです。多忙な社会人が毎日官報を購入してチェックしたり、お金を払って名前検索をわざわざするとは思えません。

 

それでは次の項で、具体的な破産後の生活について踏み込んでいきたいと思います。

 

具体的な破産後の生活

自己破産後の財産は?

99万円の現金と生活に必要な財は手元に残せます。自動車は評価額が20万円以下の場合は手元に残ります。不動産(土地・家)は競売か任意売却されますから、手放さないといけません。

 

退職金を受け取る予定がある場合は、その8分の1を裁判所に支払わないといけません。この場合、分割払いで毎月給料から支払っていくことになります。
破産後はこれまでの借金は免除となるので、仕事の給料はそのまま問題なく受け取ることができます。

 

差し押さえ禁止財(生活必需品として手元に残せるモノ)

29インチ以下のテレビ・ラジオ・パソコン・冷蔵庫・エアコン・DVDレコーダー・ブルーレイレコーダー・掃除機・洗濯機・電子レンジ・湯沸かし器・鏡台・食器具・洋服タンス・ベッド・食器棚・調理器具・冷暖房器具・漫画・ゲーム・・DVD/ブルーレイ(ソフト)・CD(ソフト)・生活していくのに必要な衣類

 

 

 

破産後5年〜10年は新しい借金ができない

前述した通り、破産後は一定期間新しい借金はできません。そこで問題になってくるのが「クレジットカード」でしょう。クレジットカードというと、ショッピングに便利であり、「信用の証」という側面があります。

 

大人がクレジットカードを持っていないと、疑問に思われることがあります。そこでおすすめなのが、「VISAデビットカード」です。これはブラックリスト登録されている人でも利用でいます。

 

口座の残高内でしか買い物ができないので借金をする恐れはありません。VISAのクレジットカードを同じ使い方ができるので、公共料金やインターネットショッピングの時に重宝します。これを代用するという手もあります。

 

もし「なんでクレジットカードを持っていないのか」と理由を聞かれたら「昔はクレジットカード持っていたけど現金払いにして金銭感覚がしっかりした」「過去にカードを紛失して悪用されて、それ以降持たなくなった」「セキュリティ面で不安だから」などの回答例があります。

 

破産後5年〜10年はクレジットカードが持てない生活となります。カードが持てない時の生活は以下の通りです。

 

仕事は続けられるか

自己破産をしても裁判所から職場に連絡がいくことはないです。官報を毎日チェックしている会社はないですし、多く場合で会社に知られることはありません。そもそも知られることもないですし、自己破産を理由に仕事をクビにすることは禁止されています。

 

ただし、注意点として会社から借金があるケースは、裁判所から連絡がいくので、このケースは会社にバレてしまいます。

 

携帯電話(スマートフォン)

電話料金(通信料金)をきちんと毎月支払っていれば、携帯電話が使えなくなることはありません。

 

ただし、破産後は、5年〜10年間はローンを組んで新規の携帯電話(スマートフォン)を購入することはできません。割賦契約(新規本体は分割払い+月々の通信料金)はできませんので、注意が必要です。

 

通信料金(電話料金)を支払いながら、本体は一括で購入する必要があります。一括といっても、現在のスマホは7万円〜と高額なものが多いです。中古品だと本体は1万円程度で購入できます。

 

破産後の住居

賃貸住宅に住んでいる場合は、家賃を滞納することなく毎月支払っているなら問題なく破産後も住み続けられます。

 

破産前に家賃滞納しているケースは立ち退きを要求される可能性があります。この場合、他の賃貸に引っ越す必要があります。事前に自由財産の拡張を主張して「引っ越し費用」を確保する必要があります。

 

マイホームを所有している場合、原則競売にかけられるので、手放さないといけません。売却または競売にかけられるまでの期間(半年程度)はそのまま住み続けられます。その後立ち退きの必要があります。

 

多くの場合、担当の弁護士が紹介してくれた物件に住むことになります。自己破産後でも一定の収入があるのであれば民間の賃貸を借りることも出来ます。(破産のことは大家等に話す必要はありません)

 

税金を滞納していないなら公営住宅(市営住宅、県営住宅)に住むこともできます。破産後の居住については、事前に引っ越し費用を確保しなければいけないこともあるので、しっかりと担当の弁護士と相談しておく必要があります。

 

 

 

家族への影響

自己破産は手続きをした本人にのみ適用されます。破産者の財産を換金して債権者に配当し、借金返済にあてられます。残りの借金は連帯保証人に請求がいきます。

 

破産者本人と連帯保証人にのみ影響があり、それ以外の人は一切影響を受けません。ですから、親が自己破産をしても子どもが肩代わりする必要はありませんし、家族に取り立てがいくこともないです。

 

財産は破産者本人名義のもののみ売却されます。家族の財産は守られます。

 

ただし親が破産したケースでは、以下の影響は考えられます。
・教育ローン
破産後5年〜10年は教育ローンを組めません。ですから毎月貯金をして養育費をためておく必要があります

 

・奨学金
自己破産をした人は奨学金の連帯保証人になれません。この場合、破産をしていない親や親せきに連帯保証人になってもらうか機関保証制度を活用することで、問題なく子どもは奨学金を受けられます。

 

官報から知人にばれないか

官報とは政府が発刊している広告誌ですが、そこから自己破産したことが知られる可能性は極めて低いです。官報には破産者の住所氏名、身元不明の死亡者の情報、相続人検索の広告、あと商業の関係では入札公告、会社の解散・合併広告や決算公告など、様々な情報が載っています。

 

その中で特定の人物を見つけるのは困難ですし、官報という言葉自体馴染みのないものです。一般の方の目につく機会はほとんどありません。自分から自己破産をしたと話さない限り、自己破産をしたことが周囲の人に知られることはないです。

 

破産後の就職、転職

履歴書や面接で自己破産をしたことを書く義務はありません。基本的に企業は官報のチェックまではしません。ですから自己破産をしても就職や転職に影響することはありません。自分から破産したことを伝える必要もありません。

 

ただしお金を扱う仕事や信用が重視される仕事(銀行、クレジットカード会社、消費者金融、保険会社、公務員)では官報をチェックされる可能性があります。官報をチェックされると自己破産をしたことが知られるので面接に受かりません。これら5つの職だけは破産後の就職転職では避けるのが無難です。

 

離婚の原因になりえるか

法律上、一方的に自己破産が原因で離婚を主張することは認められません(民法770条)。自己破産を離婚の原因することはできません。

 

ただし双方の合意がある場合は、離婚も可能です。

 

自己破産をしても免除されない借金

破産をしたらすべての債務が帳消し、というわけではありません。以下については自己破産をしても免責はされず、滞納している場合はきちんと支払わないといけません。

 

・税金
税金や、健康保険税、年金などは自己破産しても免責の対象とはなりません。税金については民間の借金と違って免責もされませんし、滞納している場合は債務名義を取らなくても役所の独自の判断で即差し押さえができます。強制力が非常に高いですから税金だけは滞納せずきちんと払い続ける必要があります。一番優先度の高いものとなります。

 

・罰金や科料など
交通違反をした時に課せられる罰金などは免責の対象になりません。

 

・不法行為による損賠賠償請求権
例えば、横領や着服などを行った場合は自己破産をしても免責の対象とはなりません。

 

・婚姻費用や離婚時の養育費
離婚時に発生した養育費は免責になりません。

 

免責決定後の弁護士費用の支払い

自己破産の弁護士費用は30万円〜40万円程度かかります。破産者の多くはその費用を一括で用意するのは困難ですから、分割払いになります。自己破産でこれまでの借金はゼロになりますから、自己破産して出来た余裕資金を、弁護士費用の返済に充てます。

 

「月々〇万円」という形で、弁護士費用を全部払い終えるまでは、分割払いをしていきます。

 

自己破産後に差し押さえや取り立てはある?

自己破産後に差し押さえや取り立てをする行為は法律で禁止されています。

 

自己破産の申立てをすると、もしそれまでに差し押さえされていた場合は中止となり、無効になります、申立て後は一切取り立てや差し押さえをすることができません。破産後の取り立て行為は明らかな違法行為となり、「刑事罰・業務停止」の対象になります。

 

自己破産後に本人または家族や親せきに督促がこないか

債権者(貸した人)が破産者の家族や親せきに対して、支払い請求をすることは貸金業規制法や経済産業省通達で禁止されています。

 

銀行口座は?

破産後も問題なく、銀行口座は利用できます。

 

自己破産後の生活まとめ

自己破産をするとこれまでの借金は全額免除ですから、精神的な苦痛から解放されることになります。

 

自己破産をしても会社に知られることはないですし、家賃を払っている場合はそのまま住み続けられます。引っ越しも自由に行えます。

 

周囲の人に自己破産をしたことが知られることもありません。唯一の問題点としては自己破産後5年間〜10年間は新しい借金ができないことです。

 

この期間は自動車ローンや住宅ローンは組めないですし、クレジットカードも持てません。借金を一切しない生活を送ることになります。

 

弁護士費用は必要になってきますから、免責がおりた後に分割払いをしていきます。破産後は特に法的な制限があるわけもなく、これまで通りの生活を続けていくことができます。

 

 

 

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