同時廃止と管財事件どちらになるか、振り分けの基準!

自己破産が「同時廃止」「管財事件」どちらになるか、振り分けの基準!

自己破産手続きには3種類あります。それが、「同時廃止」と「少額管財事件」と「管財事件」です。

 

自己破産とは債務者の財産をすべてお金に換えて債権者に平等分配することを条件に債務を全額免除してもらう手続きです。

 

通常の自己破産では申立書と書類を裁判所に提出し、その後裁判官と面談をし、破産管財人が付いて債務者の財産(土地や家や車など)を売却(競売にかけたり任意売却したり)してお金に換えて債権者に支払われ、最後に免責の尋問があり、免責決定という流れになります。これが通常の自己破産(管財事件)です。財産をお金に換える作業が必要なため手続き期間は長く、半年〜1年かかります。

 

同時廃止とは債務者にまとまった財産がない場合の手続きとなります。お金に換える財産がないため、申立て後すぐに面談をし、その後免責の面談をし免責決定となります。ようは通常の自己破産の最も簡略化(省略化)した手続きとなります。破産管財人を付ける必要はなく財産の換金も必要ないので、手続き期間は短く、裁判所に納めるお金も少ないです。手続き期間は3ヵ月〜4ヵ月となります。

 

少額管財事件は管財事件と同時廃止の中間となります。借金を作った経緯に問題があったり(ギャンブルや浪費投資など)カードの現金化をしたり財産隠しなど不正が疑われるケースに適用されます。裁判所が中立な立場でより細かい調査をする破産管財人という弁護士を選出します。より細かい調査が必要なため、そこで多少手続き期間がかかります。破産管財人を選出するのに20万円必要です。

 

予納金(裁判所に納めるお金)ですが、管財事件は50万円ほどかかります。同時廃止は2万円〜3万円となります。少額管財事件は20万円必要です。予納金は分割返済が可能です。

 

このように同時廃止が最も手続き期間が短くて予納金も安い手続きとなり、管財事件が最も手続き期間が長く、費用も高い手続きとなります。少額管財事件はその中間です

 

 

 

同時廃止になるか管財事件になるかの基準について

同時廃止と少額管財事件と管財事件の3つのどれかになるかですが、これは最終的には裁判官が判断することになります。ですから最終的には手続きをしてみるまでどの手続きになるかはわかりません。

 

少額管財事件だと見積もられていた案件が同時廃止になるケースや逆に同時廃止だと見積もられていたら少額管財事件になることもあります。やはり手続きしてみるまでわからないということになります。ただしあくまで目安となるのですが、基準はあります。以下の通りです。

  • 債務者が持っている資産が20万円以下の場合は同時廃止となる
  • ギャンブルや浪費や投資が原因の借金は少額管財事件となる
  • カード現金化や不正が疑われるケースでは少額管財事件となる
  • 不動産(土地・家)を所有していれば管財事件となる

債務者が持っている財産が20万円以下の場合は同時廃止となる

同時廃止と管財事件を分ける基準、それは財産の多寡です。

 

債務者にまとまった財産がないケースでは売却してお金に換える作業が必要ないため同時廃止となります。その1つの基準としては「20万円以上の資産を持っているかどうか」です。もっと具体的に言うと、「弁護士費用や申立費用や最低限の生活費など(有用の資)を除いた金額が20万円以下である場合は同時廃止となる」可能性が高いです。

 

有用の資とは以下の費用のことです。(文献:全国倒産処理弁護士ネットワーク編『破産実務Q&A200問』より)

破産申立費用(予納金・弁護士費用等)/生活費/医療費/転居費用/葬儀費用/学費/公租公課の支払い/

資産としてみなされるのは以下の項目となります。

 

資産価値としてみなされるもの

現金(手元にあるお金)、預金、不動産(土地・建物)の査定額、自動車の査定額、退職金の1/8、保険の解約返戻金

たとえば手元に現金が5万円、預金が50万円しかなく、賃貸住みで自動車も持っていなく、退職金も見込めない場合は、その人の資産は55万円です。この金額から有用の資(生活費毎月15万円、医療費毎月2万円、弁護士費用30万円を分割払い)を除いた金額は8万円となります。

 

このケースでは同時廃止になる可能性が高いです。

 

もし手元に現金5万円あり、預金に20万円ほどあり、さらに自動車(査定額が25万円)を所有しており、退職金見込み額の1/8が100万円の場合、その人の資産は150万円となります。有用の資(生活費毎月20万円、弁護士費用の40万円を分割払い)を除いた金額は90万円となります。このケースでは少額管財事件となる可能性が高いです。

 

これらの判断は素人では難しいので必ず弁護士や司法書士と相談し、見積もりを出してもらうとよいです。

 

ギャンブルや浪費や投資が原因の借金は少額管財事件となる

借金が増えていった理由がギャンブル(パチンコ競馬競輪など)や浪費(異性関係や買い物依存など)や投資(株やFXなど)の場合は、少額管財事件となるケースが多いです。

 

借金を作った経緯や今の生活状態や反省態度など細かく調査する必要があるため、中立な立場で指揮監督する破産管財人が選出されることになります。ようは裁判官は免責を認めるかどうかの判断材料が必要なため、破産管財人に詳しく調べてもらってそれで免責が相応しいかどうか決めることになります。

 

破産管財人とどのような面談をするかですが、これは破産管財人によってそれぞれです。別の案件を抱えていて忙しかったり担当の弁護士がしっかりしているケースでは1回の面談だけで、それも10分の質問だけで終わるケースもあります。しっかり調査する方ですと反省文を求められることもあります。どこまで調査されるのですが一般的には以下の通りです。

過去1〜2年の口座の出入金記録、税金内容、郵便物、未申告の口座の有無、新たな借金をしていないかどうか、退職金の有無、隠し財産の有無、生活態度、素行調査など

 

カード現金化や不正が疑われるケースでは少額管財事件となる

カードの現金化とはクレジットカードの分割払い(リボ払いなど)で商品を購入し、それを売却してお金に換えることです。これをしてしまうと免責不許可事由に該当するため破産管財人が付くことになります。

 

それ以外にも債権者漏れがあったり提出書類に明らかな矛盾点があり、不正が疑われるケース。裁判所への非協力的な態度(裁判所に本人が時間通り出頭しない)や一部の債権者にだけ返済するなど不正行為が発覚したケースです。これらは免責不許可事由に該当します。

 

このような場合、借金ができた経緯や不正行為の実態などを詳しく調査する必要があるため、少額管財事件として振り分けられ、破産管財人が選任されます。

 

不動産(土地・家)を所有していれば管財事件となる

「破産者が不動産を持っている場合、ほぼ確実に管財事件になります」不動産は車と違い、どんなに古いものでもそれなりの財産となりますので、それを処分して、その売却益を債権者に分配するために管財事件となります。

 

まれな例外として、破産者が大きな住宅ローンを抱えていて、そのローンが不動産の資産価値を大幅に上回っている場合、管財事件にならないことがありますが、基本的には、不動産所有者が破産申し立てイコール管財事件と覚えておくとよいでしょう。

 

※その不動産によって担保される借金の総額がその担保不動産の換金価値の1.5倍以上である(オーバーローン状態)場合は、不動産を所有していても同時廃止となります。

 

そもそも地方裁判所によっては少額管財事件がないケースもある

これまで同時廃止と少額管財事件と管財事件の3種類で解説してきましたが、そもそも少額管財事件がない地方裁判所もあります。そういった裁判所では同時廃止か管財事件のどちらかしかありません。

 

少額管財事件のある地方裁判所は以下の13か所となります。

東京地裁 /横浜地裁 /さいたま地裁 /千葉地裁/静岡地裁/名古屋地裁/大阪地裁/京都地裁 /神戸地裁/広島地裁 /福岡地裁 /仙台地裁 /札幌地裁/

それ以外の地方裁判所では財産がなければ同時廃止、免責不許可事由に該当するケースや不動産を所有しているケースでは管財事件というシンプルな分け方となります。住んでいる住所地が管轄裁判所となるので、たとえば東京都に住んでいたら東京地裁に破産申し立てをすることになります。

 

同時廃止と少額管財事件と管財事件の基準まとめ

20万以下の財産しかなく、借金をした理由に問題がない場合は同時廃止になる可能性が高いです。

 

20万円以上の財産を持っていたり、借金をした理由に問題がある(ギャンブルや浪費投資)場合や不正行為をした場合は少額管財事件になります。

 

ただし、実際に同時廃止になるか管財事件になるかは、裁判所の裁量によるところが大きいので、管財事件になってもおかしくない事例が、同時廃止になることもあります。なので、管財事件になるかどうかは裁判所が決めることで、基準が絶対ではないということも覚えておきましょう。

 

ただし、不動産所有者が自己破産申請をした場合、ほぼ確実に管財事件になりますので、不動産所有者が自己破産する場合、管財事件になります。

 

管財事件は予納金が高額になりますが、分割払いが許されています。

 

 

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