個人再生とは?個人再生のメリットとデメリット

個人再生とは?個人再生のメリットとデメリット!

個人再生とは?概要

個人再生とは、裁判所の力を使って、借金を約80%カットし、残額を3年計画(36回払い)で返済する手続きです。

 

債務整理の中でも、自己破産の場合、住宅や現金などすべての財産は引き上げられますが、個人再生の場合、マイホームを手放さずに借金整理ができます。

 

裁判所の手続きで借金整理をするため、確かな効果があり、大幅な借金カットができます。個人再生は大幅カットした借金を3年(5年)かけて分割返済していきます。「将来継続的な収入があること」が利用条件になります。

 

デメリットは個人再生の認可決定後、7年間〜10年間ブラックリストに登録されます。その期間はクレジットカードが持てなかったり、新しい借金(ローンを含む)を作れません。官報にも掲載されます。

 

借金の大幅減額というメリットに対して、デメリットは少なく、日常生活に支障が出ることはまずありません。自分から話さない限り、個人再生をしたことが知人友人に知られることはありません。

 

ではこれから個人再生の具体的なメリットとデメリットについて解説していきます。

 

参考文献:「事例に学ぶ債務整理入門」(事件対応の思考と実務〜債務整理実務研究会〜)

個人再生で借金はどの程度減るのか?

個人再生をした場合の、借金の返済額は以下の通りです。

 

借金総額 最低弁済額
100万円未満 全額
100万円〜500万円未満 100万円
500万円〜1500万円未満 借金総額の5分の1
1500万円〜3000万円未満 300万円
3000万円〜5000万円以下 借金総額の10分の1

 

注意点として、借金が100万円以下の場合、返済額は全額になります。この場合、借金はまったく減りません。これでは個人再生をする意味がないではないと思うでしょうが、そうではありません。

 

借金が100万円以下の場合でも、返済期間を延ばしたり、調整してもらえるので、そこで月々の返済可能な計画を立てることができます。個人再生は「借金を減らす」だけでなく、「返済期間の延長、調整」ができるのもメリットの一つです。

 

※あなたの財産価額が最低弁済額を上回るときは、財産価額が弁済額となります。(民再174条2項4号、231条1項)

 

個人再生のメリットとデメリット

個人再生のメリットとデメリットをまとめると以下のようになります。

 

個人再生のメリット

・借金総額によるが、返済総額の約80%をカットできる
・ローン支払い中のマイホームを残すことができる
・借金を作った理由は問われない
・職業の制限を受けない(個人再生をしても仕事に支障がでない)
・債権者からの取り立てが止まる

 

個人再生のデメリット

・ブラックリスト登録される
・官報に掲載される
・申立てから再生計画が認められるまで約6カ月かかる

 

個人再生の5つのメリット

一つ目に借金が大幅にカットされることです。借金の減額で話した通り、個人再生をすることで借金の大幅カットが可能です。

 

二つ目にローン支払い中のマイホームを残せることです。通常ですと、住宅ローン支払い中に債務整理をすると、マイホームは手放さないといけませんが、「住宅資金貸付債権の特則」を利用することで、住宅ローン支払い中のマイホームを手放さずに個人再生ができます。

 

この場合、住宅ローンの支払いはそのまま続け、それに加え個人再生で減額した借金を返済していないといけません。ゆえに「返済能力の有無」が問われることになります。

 

三つ目は借金を作った理由は問われないことです。自己破産の場合、ギャンブルや浪費、FXなどで作った借金は債務整理ができません。借金の理由によっては、免責が下りないのです。

 

一方、個人再生の場合、ギャンブルや浪費(ショッピング)、投資で作った借金でも債務整理ができます。借金の理由が問題にされることはありません。

 

四つ目は職業の制限を受けないことです。自己破産の場合、申立てをしてから免責が下りるまでの約4カ月間、就けない職業が決められています。
個人再生の場合、こうした職業の制限は一切ないため、仕事の心配をする必要はありません。

 

五つ目は個人再生を弁護士や司法書士に依頼すると貸金業者からの取り立てがすぐに止まります。弁護士が個人再生に着手するとまず各貸金業者に「受任通知」を送ります。
受任通知が弁護士から発送されると、貸金業者は債務者に対して、直接請求ができなくなります。これに違反すると、業務停止や刑事罰の対象となり、強制力があります。
(貸金業21条1項9号)貸金業者に給料の差し押さえ等の強制執行されている場合でも、個人再生に着手することで、強制執行を中止することができます。

 

 

 

個人再生の3つのデメリット

一つ目にブラックリストに登録されることです。個人再生をすると7年〜10年間信用情報機関に「事故情報」として掲載されます。各貸金業者は新規客にお金を貸す時に必ず「信用情報機関に事故情報」がないか確認し、なかったらお金を貸します。
ブラックリストに載っていると、審査の段階でチェックが入ります。ゆえに、事故情報に登録される7年間〜10年間は新しい借金(クレジットカード、ローン、サラ金等)をすることができません。
このブラックリストは貸金業者が新規客の審査の時にのみ利用される情報です。一般の方がタッチできる情報ではないので、ブラックリスト情報が第三者に知られることはありません。

 

二つ目に官報にあなたの名前が掲載されることです。
官報とは、政府が毎日発行している「法律の制定・改正や裁判内容が掲載された」新聞のようなものです。
この官報には個人再生の裁判内容も書かれます。官報に名前が掲載されると、個人再生したことが知人に知られてしまうのではないか?と不安になると思います。
実際は以下の4つの理由から官報から知人友人に知られる可能性は極めて低いです。

 

・毎月数百人と債務整理をした人の名前が掲載されるので、その中から特定の人物を探すのは困難
・官報情報が見れるのは「実際に官報を購入するか」「ネットで月額サービスに入って、検索をかけるか」のどちらかのみ
・ネットのサービスで官報の氏名検索ができるが、月額サービスに入らないといけない
・個人再生という言葉自体、馴染みのない言葉で、知名度が低い

 

官報自体、世間一般的に知名度が低いですし、そこには毎月数百人、何千人という人の名前が掲載されます。官報が見れるのはごく限られた場所のみです。
官報から個人再生の事実が広まることはないでしょう。

 

三つ目は申立てから再生計画が認められるまで約6カ月かかることです。
個人再生は裁判所への申立手続きがとても複雑です。求められた書類や費用を提出期限日までに提出する必要があります。それらの書類を提出できないと手続きは終了してしまいます。
自分で個人再生をするのは困難です。必ず弁護士(司法書士)に依頼する必要があります。弁護士に依頼すると書類作成から裁判の代理人まですべての業務を行ってくれます。

 

どのような人が個人再生を利用できるか、利用条件

以下の2点の条件を満たしている人は個人再生を利用できます。

 

・借金の総額(住宅ローンを除く)が5000万以下であるか
・継続的な収入があるか

 

個人再生は「借金総額が5000万円以下の人」に限られます。

 

個人再生は原則、減額した借金を3年間(例外5年)で分割支払いしていく手続きですから、「将来継続的に収入を得る見込みがある人」でないと利用はできません。(民再231条1項、174条2項2号)

 

ゆえに、無職の人や生活保護を受けている人は個人再生を利用できません。定職に就いており、安定した収入を得ていれば個人再生を利用できます。

 

もし返済途中で返せなくなったら?

返済計画案が認可されると、返済計画に従って毎月、借金の返済を行います。計画通りに返済できればよいのですが、途中で返済できなくなる場合も当然考えられるでしょう。

 

個人再生では、返済が滞った場合、救済処置が用意されています。もし、病気やリストラ、転職で収入が減ったなど「やむをえない理由」で返済できなくなった場合は、2年を超えない範囲で、支払い期間の延長ができます。

 

返済計画は基本3年ですが、場合によっては5年まで延長ができるのです。ただし、これはやむをえない理由があった場合のみです。

 

もし理由なく支払いをしないと、最悪「再生計画の取り消し」になってしまいます。こうなってしまうと、個人再生前の借金額に戻ってしまい、残された道は「自己破産」しかありません。

 

再生計画の支払いが始まったら、最後まで支払い終える意思を強く持たないといけません。

 

個人再生にかかる費用

個人再生を利用するには弁護士に依頼する必要がありますが、弁護士費用は当然タダではありません。

 

結論から言うと、住宅ローン特別条項を利用する場合(マイホームを残す場合)は約50万円〜60万円必要です。住宅ローン特別条項を利用しない場合は約40万円〜50万円必要です。

 

これを聞くと「いま借金返済で苦しんでいるのに、さらにお金が必要なのか」と思う人もいると思います。弁護士費用は、弁護士の介入によりまずは債権者への支払いを完全に止め、その分を弁護士費用に充てられます。

 

また、個人再生によって借金を大幅にカット、月々の借金支払額を減らし、その分が弁護士費用に賄われます。

 

ようは「今ある借金に加えさらに弁護士費用がかかる」のではなく、「まずは弁護士の介入で借金を大幅に減らし、今まで借金に充てていたお金を弁護士費用に回す」ということです。

 

弁護士は、債務者が借金返済に苦しんでいるのは理解しています。弁護士費用を含めた無理のない返済計画を立ててくれます。

 

弁護士費用を含めると、債務整理をする前より借金が増える場合、弁護士は債務整理を勧めてきませんし、こちらも無料相談の段階で断ることができます。

 

弁護士費用は分割払いなど十分考慮されているので、まずは無料相談をしてみることが大事です。

 

 

 

個人再生Q&A

個人再生をすると車は引きあげられるか?

個人再生をしてもあなたの財産は取り上げられません。ですから、ローンを完済している車は個人再生をしてもそのまま所有できます。

 

ローン支払い中の車は引き上げられます。ただし、仕事でどうしても車が必要な場合、体が不自由で移動に自動車がどうしても必要な場合は弁護士と相談し、残せることもあります。

 

アルバイト収入しかないけど個人再生できる?

アルバイトといっても、何年も勤めている場合や、短期アルバイトなどさまざまです。「定期的な収入」がある場合は、アルバイトでも個人再生は可能です。

 

過去数年の業績や今後数年の収入の見込みをしっかりと証明できれば、「継続的な収入を得る見込みがある」と判断されます。同様の理由で、水商売の人や年金暮らしの人も、継続的な収入があれば、個人再生できます。

 

個人再生をすると仕事に影響する?

個人再生は職業の制限はないため、仕事に影響はありません。官報に掲載されますが、毎日細かく官報をチェックする企業はほぼありませんので、個人再生をしたこと自体知られることはないです。

 

個人再生を理由に解雇することは禁じられているため、万が一知られてもクビになることはありません。

 

個人再生をする時に用意する書類に「退職金見込額証明書」があり、これを会社に請求しないといけません。この場合も「住宅ローンを組もうか考えている」「家族の保証人になって」という別の理由を言えば会社に知られません。

 

個人再生手続きのために「給料明細書」「源泉徴収票」「退職金見込額証明書」を裁判所に提出しないといけませんが、必要書類は会社に知られずにすべて揃えられます。個人再生をしたからといって仕事に影響がでることはありません。

 

個人再生をすると、家族や息子に悪い影響はある?

個人再生をする時に影響があるのは、「債権者(貸した側)」「債務者(借りた側)」「連帯保証人」の3者だけです。家族が連帯保証人になっていない場合、全く影響はありません。

 

ただし、個人再生をすると7年間新しい借金ができないので、子供の奨学金の連帯保証人になる時困ります。

 

この場合、債務整理していない親御さんが連帯保証人になるか、国の機関保証制度を利用すれば、連帯保証人なしで奨学金が受けられます。

 

個人再生をすると生命保険や退職金はどうなる?

個人再生をしても生命保険はそのまま残せますし、退職金も全額受け取れます。

 

ただし生命保険をそのままにして個人再生をすると、毎月の返済額が増えるケースがあります。そこはしっかりと弁護士と相談して進めていく必要があります。

 

奨学金で作った借金でも個人再生できる?

奨学金も個人再生ができます。

 

個人再生をすると知人にその事実が知られる?

個人再生をした事実が知られるとしたら「官報」からだけです。住民票や戸籍謄本には記載されません。前述した通り、官報は購入するかネットの月額サービスになってお金を払わないと情報を見ることができません。

 

そもそも個人再生も官報も一般的に馴染みのない言葉ですし、自分から言わない限り、知られることはないです。

 

税金を滞納しています。個人再生をすると滞納した税金はどうなる?

税金は個人再生の減額対象外です。税金は全額支払わないといけません。もし払えない場合、役所と話し合って、分割払いをお願いしてみるとよいでしょう。

 

個人再生をすると就職、転職は不利になる?

就職の時に官報情報をチェックするのは金融くらいです。

 

殆どの企業は、官報をチェックしません。個人再生をしたからといって、就職、転職で不利になることはありません。

 

個人再生をするとクレジットカードは持てない?

個人再生後には今使っているクレジットカードは使えなくなります。ブラック期間の7年程度は新しいカードは作れません。

 

ブラックリスト解除されれば、新しいクレジットカードは作れるようになります。

 

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