住宅ローン支払い中のマイホームを守りながら債務整理をする方法!
多重債務で苦しんでいるけど、マイホームを失わずに債務整理する方法はある?
債務整理には、大きな括りとして「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つがあります。
自己破産は全財産を債権者(貸し主)に差し出す代わりに、すべての借金をリセットする手続きです。その時にマイホーム(ローン支払い中でも)も一緒に失うので、持ち家を残すことはできません。
一方、任意整理と個人再生は、マイホームを残したまま債務整理することができます。マイホームを失わないで債務整理をする方法としてはこの2つしかありません。
任意整理でマイホームを残す
任意整理とは、専門家(弁護士・司法書士)が代理人となって債権者達と交渉し、無理のない返済計画を立て直す方法です。
利息分をカットしてもらったり、遅延損害金をカットしてもらったりすることで借金を減らし、現在の収入に見合った新たな分割返済の計画を立てます。
借金には「カードローン」「消費者金融」「住宅ローン」「奨学金」「自動車ローン」など様々な種類がありますが、任意整理では、自由に対象先を選ぶことができます。
たとえば、住宅ローンの他に、サラ金とカードローンの借金があった場合、住宅ローンには手を付けずに、サラ金とカードローンの借金を任意整理の対象にすることで、マイホームを失うことなく、借金を減らすことができます。
任意整理では、裁判所を通さないで行う借金整理なので、個人再生と比べて、デメリットは少ないです。
官報に載ることはなく、唯一の欠点はブラックリスト入りすることです。ただしブラックリスト入りしても、金融機関内だけで共有される情報なので一般の方に知られることはなく、生活に支障が出ることはありません。
ブラックリスト入りすると、債務整理をしたという情報が業者内で共有されるので、審査時にチェックが入り、新たなクレジットカードや自動車ローン、住宅ローンを5年間組めなくなります。任意整理後の5年間は現金主義に徹する必要があります。
裁判所を通さないで行うということは、どの程度借金を減らせるかは決まっていないということです。
裁判所を通す手続きでは、借金が1/5になったり、全額免除されたり、明確な縮小率が決まっていますが、任意整理はあくまで双方の合意で縮小率が決まります。
元本を残して、利息と遅延損害金は払わなくてもよいということで和解してくれる貸金業者もいれば、将来利息だけカットしますという貸金業者もいます。
弁護士は過去の債務履歴と法的知識を武器に、債権者と粘り強く交渉します。
弁護士・司法書士の交渉力にもかかってきますが、一般的、個人再生と比べて縮小できる借金は少なめです。
個人再生でマイホームを残す
個人再生は、裁判所に申入れをすることで、借金を1/5にカットする手続きです。
昔は、任意整理しても返せないほどの多額の借金を背負っている人は、自己破産をして持ち家を手放さなければいけない運命でした。
しかし、「住宅資金貸付債権に関する特則」という制度ができて以降は、これを利用すれば、持ち家を残したまま、個人再生をすることが可能になりました。
住宅ローンの支払いを怠ると、債務者(借り主)は分割返済の権利を失い、ローンの残額と利子と遅延損害金をすべて一括で支払わなければいけないのが原則です。
しかも、住宅につけられた抵当権が実行されれば、持ち家を失うことになります。(ローンの返済を怠ると、住居の立ち退きを要求され、残りのローン残額に利子と損害金が加えられた借金を一括で支払わなければいけない)
しかし、個人再生時に、「住宅資金貸付債権に関する特則」を利用すると、持ち家を守りながら、住宅ローンについての返済計画の組み直しを行うことができます。「住宅を手放さずに個人再生をすることができる」のです。
住宅ローン特則を使った個人再生では、まず借金は手続きを行うことで1/5〜1/10まで減額されます。住宅ローンについての減額はありませんから、住宅ローンはそのまま遅れなく毎月支払います。ようは住宅ローンの支払いはそのままで、それに個人再生で住宅ローン以外の借金を1/5程度に減額し、それも毎月3年かけて返済していくということです。
住宅ローン特則を使っても住宅ローンの借金は減額されないのでその点は注意が必要です。
「住宅資金貸付債権に関する特則」は、住宅ローンを抱えた多重債務者であっても、一定の収入が見込めれば、手続きを利用することができます。
住宅ローンの返済が遅延していても、滞納期間が6か月以内でしたら利用できます。次に、具体的に特則を利用できる人の条件について説明していきます。
「住宅資金貸付債権に関する特則」を利用するための条件
「住宅資金貸付債権に関する特則」を利用するための条件は決して厳しくなく、一般的な住宅ローンであれば、たいてい特則の対象になります。
ただし特則が適用されるかどうかは専門的な判断も必要になるので、最後は弁護士や司法書士など専門家に相談することが大事です。
1.自らが所有していて、実際にその建物に居住していること
債務者(借りた側)が所有していない建物は、手元に残すことができません。契約者が債務者であり、その建物に住んでいれば、適用されます。もしも、たとえば店舗や事務所と併用している建物であっても、その建物の全面積の1/2以上に相当する部分が、債務者の居住のために使用されていれば、特則の対象内です。
また、今は住んでいなくても、将来居住する予定のある建物でも適用可能です。
2.建物に抵当権が設定されていること
建物に抵当権が設定されていることが特則を対象にする絶対条件になります。抵当権とは、銀行に住宅ローンを借りた時に、もし払えなくなった時のために家や土地をその借金の担保として確保していくためのものです。
銀行は、あなたが住宅ローンを払えなくなったとき、大損するのがいやなので、損害を補うための保証物として家を確保しておき、住宅ローンの支払いができなくなったときは、その家を銀行が取り上げます。
建物に抵当権を設定することは、貸した側からすれば、もしもの時のためのリスク回避につながっているのです。
建物に抵当権が設定されていれば、特則を利用することができます。
3.住宅ローン以外に減額された借金を月々支払っていけること
個人再生は減額した借金を3年計画(5年)で分割返済していく制度です。破産と違って、手続き完了後も借金を返済していくことが大前提にあるので、一定の安定した収入があることが条件となります。
この特則を利用しても、住宅ローンの支払い額が減るわけではありません。(分割返済の組み直しはできるが、住宅ローンの総額は変わらない)特則を利用して個人再生の手続きをすると、1/5にカットされた借金は3年計画で分割返済していき、住宅ローンは今まで通りの支払いをしていきます。
現在の住宅ローンとそれ以外の減額された借金を、毎月一定額支払い続けられるかどうかが重要です。
4.保証会社の肩代わり返済から6か月以内であること(住宅ローンを滞納している場合のみ)
これは住宅ローンの返済が遅延している人にのみ言えることです。保証会社とは、債務者(借り主)が住宅ローンの支払いができなった場合に、住宅ローンの支払いを肩代わりする会社です。
銀行が住宅ローンを貸し付ける時、連帯保証人を付けずに、指定する保証会社に保証させる(機関保証)場合がよくあります。住宅ローンを借りるときは必ず連帯保証人をつけないといけませんが、債務者が保証料を支払うことで「保証会社」が連帯保証人の役割を果たすのです。
債務者が住宅ローンの支払いをせずに、一定期間が経過すると、保証会社が債務者に代わって月々の返済を行うようになります。保証会社が肩代わり返済をして6か月が経過すると、住宅ローンの権限は保証会社に変更されます。
6か月経過し、債権者が変更されると、「住宅資金貸付債権に関する特則」は利用できなくなります。しかし、保証会社がいったん肩代わりをはじめても、6か月以内に個人再生の手続きをすれば、特則を利用することができます。
滞納している場合、6か月以内に個人再生の手続きを裁判所に申し出て、許可されると、保証会社の肩代わりはなかったことになり(巻き戻し)債務者は元のように住宅ローンの支払いをしていくことになります。
5.延滞金を払うことができること(滞納している場合のみ)
住宅ローンを数か月間滞納した場合、元本の他に、利息と損害金が発生します。通常の住宅ローンですと、返済期限に遅れると、遅延損害金という遅延したことにたいする賠償金を払わなくてはいけません。
遅延期間が短ければ借金が膨らむことはありませんが、何か月も遅れると利息と遅延損害金で、多額の借金になります。これらのお金を全額支払わなくてはいけないので、かなりの負担です。
この延滞金の支払のめどが立たない場合、「住宅資金貸付債権に関する特則」を利用することはできません。このような状態に陥ってしまった場合、家族の協力を得るなどして、なんとしてでも遅れた分のローンは支払う必要があります。
マイホームを手放さずに個人再生した事例
Iさんは会社員でしたが、10年前に住宅ローンで住宅を購入しています。住宅購入後に、会社の業績が悪くなって、ボーナスカット、賃金カット、最終的にはリストラにあってしまいました。
再就職をしたものの、その時に住宅ローンの支払いに困り、消費者金融とクレジットのキャッシングで借金を繰り返してしまいました。借金総額は450万円になり、住宅ローンの返済も難しくなり、個人再生の手続きをすることになりました。
家庭があり、「ローン支払い中でも、住宅は手放したくない」という強い気持ちがありました。
個人再生をすると、住宅ローン以外の借金は100万まで減りました。100万円を3年計画で分割返済していくことになります。ただし、住宅ローンの減額はありませんから、この100万円、月々の返済額2万8000円に住宅ローンの支払いがプラスされます。
経済状況、収入と支出のバランスを確認しても、とくに個人再生返済計画に問題はありませんでした。
裁判所の許可もおり、月々の返済2万8000円と住宅ローンを支払うことで、無事、返済のめどが立ちました。
・任意整理では、住宅ローンを対象から外すことで、住宅を手放さずに借金整理ができる
・「住宅資金貸付債権に関する特則」を利用すると、住宅を手放さずに個人再生をすることができる
・特則の利用条件は決して厳しくなく、一般的な住宅ローンであれば、たいてい利用できる
・住宅ローンの返済が遅延していても、滞納期間が6か月以内だったら、特則を利用できる
・特則を利用して個人再生の手続きをすると、1/5にカットされた借金は3年計画で分割返済していき、住宅ローンは今まで通りの支払いを続けていく
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