個人再生をすると車は引き上げられるのか?
個人再生をして車が引き上げられるかどうかは、「車のローンを支払い途中か、支払い終えているか」で変わります。
結論から言うと、ローンを支払い終えた車は個人再生をしても引き上げられません。ローン支払い中の場合、原則引き上げられます。
個人再生は裁判所の手続きによって借金を8割程度カットする債務整理ですが、自己破産と違って、あなたが所有している財産は取られません。
自己破産の場合、手続きをすると生活に必要な財を除いてすべて処分されますが、個人再生は財産を守ることができます。
ローンを完済している自動車はあなたの所有物ですから、個人再生をしても引き上げられることはありません。問題になってくるのが、「ローン支払い中の車」です。
ローン支払い中の車と個人再生
ローン支払い中の場合、ローン契約で「所有者留保条項」が設けられており、あなたはまだ正式な自動車の所有者になっていません。
所有者留保条項とは、ローンがきちんと完済されるまでの期間は、商品の所有権は売主側にとどめておく条件です。
自動車ローンの場合、支払い終えるまでは、車の登録名義は「信販会社(ローン会社)」か「販売店(ディーラー)」のどちらかになっています。
車の所有権は売主側にあるので、もしローン返済が滞ったり個人再生をした時は車は引き上げられてしまいます。
まずは現在ローン支払い中の車の所有権が誰にあるのか明確にすることが大事です。自動車の所有名義は手元の自動車検査証を確認すればわかります。
個人再生の時ローン支払い中の車を手元に残す方法はないのか?
原則はローン支払い中の車は手元に残らないと思ってください。個人再生をするとローン支払い中の車は引きあげられますし、その後7年程度は信用情報機関に事故情報が掲載されるので、新しい車ローンを組むこともできません。
ただし、例外的に「仕事上どうしても必要」「足が悪く、自動車がないと通勤すらままならない」などどうしても車が必要な場合は、手元に残す手段もあります。
個人再生の際に、ローン支払い中の車を手元に残す方法は2つあります。「別途権協定を結ぶ」と「担保権消滅許可申請」です。
別途権協定を結ぶ
これはローンの債権者と別除権協定を結び、担保権の実行を保留してもらう方法です。
簡単に言えば、ローン債権者に「毎月〇万支払っていついつまでにローンの支払いを終えるから、それまで別除権(車を引き上げる権利)を使わないでください」とお願いし、協定を結ぶ方法です。
個人再生では別途権協定自体は禁止されていません。問題になってくるのが別途権協定をローン債権者が応じてくれるかどうかです。
たとえばローンの残高が1/4など、残り少ない場合、完済の見通しがつくのでローン債権者は別途権協定を結んでくれるケースがあります。
ローンの残高がまだ半分以上ある場合、完済の見通しがつかず、ローン債権者は応じてくれないケースが多いです。
別途権協定を結ぶ・しないはローン債権者の判断にあり、当然拒絶される可能性もあります。相応の理由がある場合、応じてくれることがあります。
担保権消滅許可申請(民事再生法148条)
自動車の価額を一括で支払うことで担保権を消滅させることができます(民事再生法152条)。所有者留保はなくなるので、車は引きあげられずに済みます。
これは以下の条件を満たす時に申請ができます。
・対象の財産が事業で必要不可欠なこと
・財産の価額を一括で裁判所に納付できること
裁判所に申請するので強制力があるのですが、自動車の価額を一括で納付しなければいけないため、利用条件はかなり厳しいです。
個人再生前に自動車ローンだけ一括完済するのはあり?
ローン完済した自動車なら個人再生をしても引き上げられないなら、個人再生前にローンの一括完済をすればいいのではと考える人がいます。
個人再生前に自動車ローンだけ完済するのは法律上問題ありません。ローンありの車を残す手段として有効です。
ただし、注意点として、自動車は清算価値に加算されるので、個人再生をした時の返済額が増えるケースがあります。
個人再生をした場合、減額した額よりも清算価値(現金、預金、車、保険返還金などあなたが持っているすべての資産を売却した時の値段の合計)が上回った時、清算価値が返済額になります。
ローンを完済すると、その車はあなたの所有物となり、清算価値として計算されます。
車を所有しているかしていないかで、個人再生をした時の月々の返済額が大きくなるケースがあるので注意が必要です。
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