個人再生中の退職、転職

個人再生中に退職、転職しても問題ないか?

ようやく個人再生を行うことが出来たとしても、その後の人生は大きく変わってくることもあります。
特に転職や退職を行うことになった場合は、返済をすることが重要になっている観点から、どうすればいいか迷ってしまいます。実際のところ、これらの状態に陥ってしまった場合、どのように対応していけばいいのか理解することは大事です。

 

返済できる状況なら退職、転職しても問題はない

個人再生の計画には、遅延せずにしっかりと返済することが明記されています。この計画に沿って返済を行うために、債権者は最終的に同意していることになりますから、特別な事情がない限り、返済できる状況を勝手に止めてしまうことはいけません。

 

返済できるなら、別に転職しようが退職しようが問題はありませんので、基本的には自由に行ってもいいとされています。ただ返済を遅延させることは許されていないので、退職をした場合はお金に余裕があるかどうか、転職する場合はすぐに決めることが出来るかなどの問題が当然出てきます。

 

個人再生が成立すると「毎月〇万円を債権者に支払う」という計画で進められます。「毎月期限日までにきちんと決められた額支払いができている」ならば、退職、転職は本人の自由です。

 

ただし、転職後も毎月の返済額は決まっています。個人再生の返済計画はリストラや病気など特別な事情がない限り変更はできません。

 

毎月の借金返済額は基本的に変更ができないので、そこを加味した上で、転職先を決める必要があります。

 

特別な事情がある場合は考慮されることもある

再生計画が成立した後でも、やむを得ない理由で毎月の返済が困難になった場合、2年を超えない範囲で返済期間の延長をすることができます。(民事再生法234条)

 

やむを得ない理由には「リストラ」「人身事故」「病気」「転職による減給」が挙げられます。

 

つまり、転職をして給料が減った場合、再生計画を延長して毎月の支払額を減らせることがあるのです。ただしこのやむを得ない理由に該当しなければいけません。転職前に必ず弁護士や司法書士と相談し、適切なアドバイスを貰うことが大事です。

 

第二百三十四条  小規模個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができる。この場合においては、変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲で定めなければならない。

2  前項の規定により再生計画の変更の申立てがあった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用する。
3  第百七十五条(第二項を除く。)及び第百七十六条の規定は、再生計画の変更の決定があった場合について準用する。

 

もし無断で返済を怠っていたらどうなるか?

もし返済が遅れた場合、再生計画で定められた借金権額の10分の1以上を占める債権者が裁判所に申し立てをすれば、再生計画は取り消しとなり、残りの借金の一括返済を求められます。(民事再生法198条3項、民事再生法189条)

 

これは法律上では1回滞納しただけでその権利はあります。現実的には再生計画を取り消しにして一括返済を求めても債権が回収できるわけではありませんから、多くのケースで1回や2回の滞納でしたら許してもらえるケースが殆どです。

 

無断で何カ月も滞納していると借金計画は取り消しとなるので注意が必要です。返済が遅れそうな場合は必ず事前に担当の弁護士に連絡を入れ、訳を話す必要があります。
再生計画の返済が途中で破たんしてします、これまで支払った弁護士費用や返済費はすべて無駄になってしまうので注意が必要です。

 

債務者の就職や転職時の注意点について

個人再生をしたとしても就職や転職時に履歴書にそれについて書く必要はありませんし、面接でも伝える必要はありません。基本的に個人再生をしたとしても企業がそれについて知ることはなく、就職や転職に影響することはありません。

 

ただし一部の職種だけは個人再生をしたことが影響します。お金に携わる仕事や公的な機関では信用調査をするケースがあります。具体的には銀行と消費者金融とクレジットカード会社と保険会社と公務員の5つの仕事では、就職や転職時に官報をチェックされることがあるのです。これら5つの職については最初から避けておく方が無難となります。

 

個人再生と転職、退職まとめ

・個人再生中であっても、退職、転職は自由にできる

 

・返済計画は基本的には変更はできないので、毎月の返済額を考えて転職する必要がある

 

・やむを得ない理由があって返済ができない場合、返済計画の延長が可能。転職による減給も延長の理由として成り立つ場合がある。転職前に必ず担当の弁護士に相談して適切なアドバイスを貰うこと

 

・無断で何カ月も返済を怠っていると、個人再生が無効になるので注意が必要