自己破産をするための条件

自己破産をするための条件について

自己破産をするには「支払不能状態」であることが必要

自己破産は破産法15条1項に、債務者が支払不能にあるとされ、破産法15条2項には支払を停止している時は、支払不能にあるものと推定されるとあります。

 

自己破産をするためには、「自己破産する人が支払不能の状態」でなければなりません。支払不能状態とは「現在抱えている借金が返済期限内に支払いができない状態にあり、今後返済できない状態がずっと続く状態」をいいます。自己破産に必要な条件はこれだけです。

 

※正確には破産手続きには申立要件(条件)はありませんが、裁判所が個々の生活状況から、「支払い不能である」と判断しなければ破産の決定はされません。

 

破産は相対的なもので、こうした状態なら支払い不能状態に該当するなど、一概に何万円以上の負債があれば条件を満たすといった、明確な数値はありません。提出書類(債権者一覧表や給与明細や家計簿など)から裁判官が判断することになります。裁判官が「明らかに返済が追いついておらず、今後も完済できる見込みがなく、普通の生活を送ることができていない」と判断すれば支払い不能状態だということになります。

 

支払い不能状態の1つの目安として「今ある借金総額(元本分)を3年間で分割返済できるかどうか」となります。もしくは今ある借金を自力で3年間で返済できるかどうかです。次の項では具体的に借金がいくらあれば支払い不能状態と言えるのか解説していきます。

 

どのような場合が「支払不能状態」と判断されるか

【ケース@】借金総額が500万で手取りが25万円のサラリーマン

このケースでは元本は500万円ですから、これを3年間(36回払い)で返済できるのかどうかを考えます。
「500万円÷36回払い=毎月の返済額は13万8888円」となります。手取りは25万円でそのうち返済に回せるお金はどんなに頑張っても10万円程度となるはずです。
このケースでは明らかに3年間で完済ができないので支払い不能状態と判断される可能性が高いです。

 

【ケースA】借金総額が250万円で毎月の手取りが20万円の会社員

このケースでは元本が250万円となります。これを3年で返済できるのかどうかですが、以下の計算になります。
「250万円÷36回払い=毎月の返済額は69444円」となります。
問題は手取りが20万円でそのうちいくら毎月返済に回せるのかという点になります。キツキツの返済計画を立てるとまとまった出費が重なった時に返済ができなくなります。そのため20万円のうち返済に回せるのはせいぜい5万円となります。このケースでは元本分を3年間で返済するのにはかなり無理があるので支払い不能状態と判断される可能性が高いです。ただしこのように非常に微妙なケースでは債務者(本人)の意志も尊重されることになります。
もし本人が任意整理で返済していきたい場合は返済期間を延長して毎月返済可能額まで下げて返済していくことになります。任意整理では元本分を3年〜5年で分割返済ができます。
自己破産で一度清算したい場合は自己破産の手続きを進めてくれます。

 

【ケースB】借金総額が400万円で手取りが35万円のサラリーマン

元本分は400万円となります。この返済計画は以下のようになります。
「400万円÷36分割=11万1111円」です。
毎月の手取りが35万円もある場合、借金に回せるお金は10万円〜15万円は捻出できる可能性が高いです。毎月の生活費はどのくらいかかっているのかにもよりますが、毎月借金に回せるお金が約11万円以上あるケースでは自己破産ではなく任意整理での手続きとなります。任意整理では裁判所を介さずに手続きを行い、多くのケースで利息を停止させて、元本分だけを3年〜5年で分割返済していきます。このケースでも判断は微妙ですが、十分な手取りがあるケースでは返済計画を立ててもらうことで、立て直しが可能です。
ただし借金費用を毎月捻出できるだけではなく、それを3年間継続して捻出し続けないといけません。その点は裁判官も考慮しています。ですから、本人の強い希望がない限りは年収と同等額の借金、もしくは年収以上の借金というのは支払い不能状態と判断され自己破産になるケースが多いです。

 

このように、支払不能と判断されるかどうかはケースバイケースです。事前に弁護士や司法書士と相談して債務整理を進めていく必要があります。

 

支払不能状態か否かの判断の分かれ目は「元本分を3年間で分割返済できるか」です。今の借金総額を36分割してみて、その毎月の返済額で返済していけるかどうか計算してみるとよいです。

 

 

 

その他の自己破産の利用条件について

正確には利用条件というわけではないのですが、自己破産には免責不許可事由があります(破産法第252条第1項各号)。これに該当すると最悪のケースでは免責が許可されません。免責許可されないと借金は免除となりません。免責不許可事由に該当すると絶対に免責がおりないというわけではなく、裁判官が債務者のこれまでの生活と反省態度をみながら総合的に判断します(裁量免責)。

 

それ以外にも手続き期間中の態度があまりに悪く、担当弁護士に辞任されるケースがあります。弁護士費用の問題もあります。それらの自己破産に失敗してしまうケースをまとめました。参考にしてみてください。

 

・ギャンブルや浪費や投資による借金
ギャンブルや浪費や投資によって借金を増やしたケースでも破産管財人付きの自己破産で免責がおりるケースが殆どです。ギャンブルや浪費の借金だからといって自己破産を諦める必要はありません。裁判所が破産管財人を選出して、破産管財人が債務者の借金を作った経緯と反省態度など詳しく調査して、それを元に裁判官が裁量免責するという形です。

 

・一部の債権者にだけ借金を返済した(自己破産の申し立て後はすべての債権者を平等に扱わないといけない)
自己破産の申し立てをしたらその時から債権者(お金をかした側)を平等に扱わないといけません。一部の債権者にだけ借金を返済する行為は免責不許可事由に該当します。たとえ友人の借金であっても手続き期間や免責がおりた後でも返済をしてはいけません。

 

・過去に自己破産をして7年以内であった
過去7年以内に自己破産をした人は再び自己破産の申し立てができません。

 

・財産を隠すなどの不正行為
担当の弁護士に一部の財産を伝えない行為は財産隠しに該当します。提出書類に疑わしい部分があるケースでは破産管財人が付けられ財産の調査がされます。財産隠しがバレると当然免責はおりません。

 

・債権者を隠して申立てをした
自己破産の申し立て時に債権者一覧表(借金先一覧)を記入して提出します。債権者の一部を書かないで提出する行為は免責不許可事由に該当します。

 

・自己破産の手続き前(手続き中も)にクレジットカードで現金化した
クレジットカードのリボ払い(分割払い)で商品を購入し、それを売ってお金に換える行為(カードの現金化)は免責不許可事由に該当します。
申立て前もしくは手続き期間中にクレジットカードの現金化はしてはいけません。もしそれをしてしまうと破産管財人が付けられ財産の調査がされます。

 

・担当の弁護士に嘘のことを教えたり書類や支払いが著しく遅れるなど態度が悪い
債務者の唯一の味方をしてくれるのが担当の弁護士となります。基本的に担当の弁護士が破産の注意点などすべて教えてくれます。正直にすべてを伝え、指示通りに動けば自己破産で失敗することはありません。担当の弁護士とはしっかりと信頼関係を作っていく必要があります。小さな嘘の情報を伝えるなどしても後から提出書類からすべて把握されることになります。
手続き期間中に再び借金をしてしまったり、ギャンブルや浪費をやめられなかった場合は最悪のケースでは辞任されることがあります。注意が必要です。

 

・自己破産に必要な費用の支払いができないケース
自己破産をするのにも費用がかかります。弁護士費用は30万円ほど必要で、これは3ヵ月〜半年ほどかけて分割返済していきます。その他予納金(同時廃止は2万円〜3万円、破産管財人を付けないといけない場合は20万円)必要です。これも手続き期間中に分割返済をします。
基本的に働けるのに働かないで自己破産はできません。毎月いくらかは弁護士費用を分割支払いしないといけないからです。もし働けない状況の方は生活保護を受け、法テラスから自己破産の依頼をします。無利息で弁護士費用を借りることができます。

 

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