夜逃げで借金リセット その後の生活

夜逃げで借金はリセットできるのか?

はじめは返済が十分可能だと思っていた借金も、一定の借金額になると利息によって雪だるま式に増えてしまいます。事業での失敗、病気やリストラで収入が減って借金が返せなくなった、ギャンブルや浪費、異性関係にどっぷりつかってしまった・・・様々な理由があるでしょう。

 

いつのまにか借金は返済不可能な状態になり、まわしもできなくなり苦しんだ結果に夜逃げを考えてみる。借金の取り立てが厳しくなって不安になっている人もいると思います。とにかく今の状況から逃げたい。一刻も早く取り立ての来ない平穏な時間が欲しい。そう思って逃げたい気持ちは当然あると思います。

 

しかし、夜逃げは借金問題の根本的な解決になりません。夜逃げをすると住民票が移せないため、そこで不都合が起きます。また、夜逃げしても借金の時効が成立するとは限りません。業者は住所不明者に対しても借金延長の訴訟を起こせるため、延々と借金時効は延長されていく可能性があります。

 

どうすれば借金問題を解決できるのか。今回は夜逃げの実態と夜逃げ後の生活など以下の点を詳しく解説していきます。
・夜逃げで借金はリセットする?夜逃げをするとどんな生活が待っているか?
・借金を滞納して夜逃げすると罪にならない?
・貸金業者の債権回収手段について
・借金の時効と時効が延長される3つのケースについて
・国が認めた方法で借金整理をする

 

具体的な夜逃げの方法

夜逃げはご近所さん、友人知人、家族など周囲に言わずに実行します。夜中にこっそりと荷物をまとめて実行するというイメージが強いですが、24時間営業のスーパーやコンビニ、飲食店が増えてきた現代では深夜に夜逃げするとかえって目立つことがあります。

 

プロの夜逃げ屋が行うと、事前に周囲を観察して絶対に誰にもバレない時間帯をリサーチして行うので昼間に決行する場合もあります。夜逃げをする直前はバレないように普段と同じように振る舞うので、貸金業者は夜逃げ後にその事実を知ることとなります。

 

あらかじめ転居先を決めておき、その事実を誰にも言わないようにして突然、現住所から姿を消します。意外に居場所がバレてしまう原因は友人・知人です。心許す友達には夜逃げの相談や報告をしたいと思うものです。しかし、相談を受けた友人はあなたを心配するがゆえに他人にも話してしまうケースがあるのです。

 

足取りを完全に知られないために夜逃げをすると決めたら絶対に誰にもその事実を話すことはできません。

 

夜逃げに違法性はないの?警察に相談されても罪にはならない?

夜逃げというと世間体が悪く、やってはいけないことのように感じます。
借金問題は民事上の事柄なので、警察が介入することはありません。夜逃げそのものには違法性はないです。
仮に借金取りが警察に相談をしても、警察があなたを探し出すことはありません。警察は一切介入しません。
ただし民事上の問題はあります。借金未払いの状態ですから、当然債権者は取り立てを続けます。

家族や知人友人が取り立てされることはある?

家族や知人友人や職場が取り立てられることはありません。以下の点は貸金業法の第21条で禁止されています。闇金業者でない限り、貸金業者はこのルールを守り、マニュアル通りに取り立てをしています。
・勤務先やその他 自宅以外の場所へ電話をかけたり、FAXを送信したり、訪問したりすること
・債務者以外の者に対して、債務者に代わって返済するよう要求すること

夜逃げ後の生活(/就職/公的サービス/免許)

夜逃げをすることになれば、貸金業者に知られないために、住所登録を残しておく必要があります。貸金業者の調査部門では定期的に住民票をチェックしていますから、新たな土地で転入届を出せば、すぐに居場所が知られてしまいます。

 

夜逃げをすると住民票を移すことができません。貸金業者は住民票のチェックを定期的に行っており、住民票を移すとそこから取り立てが再開します。住民票が移せないと以下のデメリットがあります。

 

・新住所先では住民票の提出が必須の会社には就職できない
・新住所で子供の本入学ができない、婚姻届けも出せない
・新住所で運転免許証の更新ができない(運転免許証は住民票のある市区町村でしか取得できません)
・本人確認書(免許証や国民健康保険)類が旧住所のままになる
・住民票、所得証明、印鑑証明書などの各種証明書が新住所の役所で発行できない
・新住所で選挙権、被選挙権が行使できない
・新住所の図書館やスポーツ施設などの公共サービスが利用できない、または利用が制限される
・新住所で国民年金や児童手当の受給ができない

 

免許証の更新は住民票のある市区町村でしか取得できないため、免許証を更新する時は、更新の年の誕生日の前後1ヶ月間に旧住所の免許センターで行わないといけません。免許証や国民健康保険証の住所欄の記載は旧住所のままになりますから、本人確認書類として必要な時は、不備が起きることがあります。たとえば一部の銀行では、口座開設する時本人確認書類の住所と現住所が違う場合、口座開設はできません。

 

住民票が移せないので就職時に大きく影響します。内定が決まり、入社にあたって住民票を提出するのが一般的です。会社は住民票で正式な氏名と生年月日、住所を確認し、その情報を労働者名簿に記載し、雇用保険と社会保険と厚生年金の手続きを行います。

 

夜逃げをしていると新住所での住民票が取得できないので、就職時に不都合が起きます。住民票の提出不要な職もありますが、そういった職は限られています。正社員ではなく非正規雇用となる可能性が高いです。

 

子どもがいる場合は、新住所で子供の本入学をすることができません。それには住民票が必要になるからです。その他、公的な書類が必要な時は旧住所まで取得しに行かないといけませんし、新住所での選挙権はなく、新住所での図書館やスポーツ施設など公的サービスの利用ができません。

 

貸金業者の借金回収方法

貸金業者は相手が夜逃げしたとわかったらあらゆる手段を使って追跡をはかります。以下、債権者の追跡、回収方法をご紹介します。

住民票を定期的にチェックする

貸金業者の調査部門は住民台帳を念入りにチェックしています。住民票を移すとすぐに返済の請求が来るようになっています。

 

督促の手紙や電話や自宅訪問や内容証明郵便で債務者にプレッシャーをかける

これが貸金業者の基本的な取り立て方法となります。定期的に手紙を送ったり、電話や自宅訪問をしてプレッシャーをかけてきます。
あとは内容証明郵便が送られてくることもあります。これはただ単に郵便局こういった内容の手紙を送りましたよ、と郵便局に証明してもらうためだけのものです。
ただ内容郵便証明を知らない方は驚きます。このように圧力をかけて返済を促してきます。

 

免許証から探りを入れる

免許証から探る手もあります。そのために業者は、「住民票を本人に成りすまして取り、本籍地の変更と転出届け」をした後、運転免許センターに行きます。そこで運転免許の申請手続きをすると、申請書に未記入の「本物の現在の住所」を係員が確認します。
これは、不正な免許の二重取得を防ぐ保安システムを逆手にとった手口です。

 

給与や預金差し押さえ

職場を特定されているケースでは給与差し押さえ、預金を特定されているケースでは預金差し押さえです。

 

借金時効延長の手続き

裁判をするのにもお金がかかり、経費対効果を考えて殆ど考えられませんが、たとえば元本分だけで300万円以上あるなど、借金総額が大きいケースでは借金の時効延長の裁判を起こされることがあります。

 

プロに取り立てを代行してもらう

借金回収が困難な場合は、債権の回収業務を行う民間の専門業者に委託することがあります。貸金業者よりさらに専門的で厳しい追跡を受けることになります。

 

 

 

夜逃げ中はどのような生活を送っていくのか?

以下のような生活を5年間ずっと続けないといけません。

 

・住民票は移せないので、免許証や保険証の住所は旧住所のまま、公的な書類はすべて旧住所で取得しないといけない
・住民票の提出が必要な職には就けないので、まともな職につくことができない
・選挙にいけない
・子どもがいる場合は本入学させられない(子どもがいる場合は夜逃げ不可)
・信用情報機関に延滞情報が載るので(3ヵ月以上の延滞でブラックリスト)、サラ金もクレジットカードも車や住宅ローンも一切利用できない
・給与差し押さえの心配はないが預金差し押さえされる可能性はあるのでこまめにお金を引き出さないといけない

 

夜逃げ中のメンタル面
家族や周りの人に迷惑がかかるのではないか?という不安
借金を返さずに逃げ回っているという後ろめたさと罪悪感
いつか場所を突き止められるのではないかという恐怖
給与や預金がいつ差し押さえされてしまうかわからない不安
時効延長の手続きを取られて、時効が延びてしまうかもしれない不安
永久におさまらない不安な気持ち

夜逃げ中の生活では住民票を移せないというのが一番の問題となります。就職の際にネックとなります。あとはブラックリスト入りしているのでクレジットカードも持つことはできません。

 

借金ができない中で、就職先も限られます。その中で毎月生活費を捻出しないといけません。国民健康保険は旧住所でしたら取得が可能ですが、新住所への住所変更はできないので旧住所の記載のままとなります。免許証の際、案内のハガキは新住所に届きませんので、更新月に自分で旧住所の免許センターに出向かないといけません。更新ハガキがなくても免許証さえあれば更新自体は可能です。

 

新住所で選挙に行くことはできません。やはり「お金を借りて返さずに逃げている」という罪悪感と後ろめたさが一番大きいと思います。ずっと不安を抱えながら5年間生活し続けないといけません。

 

そして後で説明しますが、借金には時効延長が可能で、万が一欠席裁判で時効延長の手続きをされたり預金の差し押さえをされたら、時効は延長されます。夜逃げしたとしても時効延長される可能性は0ではないということです。5年間夜逃げしておけば時効成立していると考えている方はこの点をしっかり把握する必要があります。

 

時効延長については後で詳しく解説します。

 

 

 

借金の時効が成立するのに何年かかる?

借金の時効は、最後に返済した日から、もしくは最後に貸付を受けた日から、借り先が業者の場合は5年、個人であれば10年です。消費者金融やカード会社や銀行から借りた借金が5年で、友人から借りた借金が10年で消滅時効にかかるのです。

 

借金の時効期間について
時効を延長する手続きとしては「借金の承認」と「差し押さえ」と「時効延長の裁判」の3つがあります。借金の承認とはたとえば「借金があることは知っている」「支払う意思がある」といったことを貸金業者に伝えることです。貸金業者は債務者との電話のやり取りを録音していますから、やり取りの中でこういったことがあると、それを根拠として時効延長をします。これまでの時効期間は無効となり、また再び1からカウントされます。時効目前の借金があるケースでは貸金業者とのやり取りには注意が必要です。やり取りによっては時効延長される可能性があるからです。

 

差し押さえされた場合も時効は延長されます。差押えは時効中断事由になります(民法147条)。民間の会社が差し押さえをするには債務名義を取る必要があります。対象物は給料か預金のどちらかで、給与差し押さえは貸金業者があなたの職場を明確に特定しないとできません。申し込み時と今の職場が一致する場合は給与差し押さえされる可能性はあります。申し込み時と今の職場が違い、なおかつ職場を変更したことを伝えていないケースでは相手は今の職場を知りようがありません。このケースでは給与差し押さえされる可能性は極めて低いです。差し押さえというのは債権者側が財産のありかを探し出さないといけないので。

 

問題は預金差し押さえです。現在3メガバンクとゆうちょ銀行は債務名義を取り、弁護士に依頼することで(弁護士会が照合をすることで)情報開示ができることになっています。ようは弁護士に依頼すると以下の銀行では簡単に預金の情報を知ることができるのです。
@みずほ銀行
A三井住友銀行
B三菱UFJ銀行
Cゆうちょ銀行(取引履歴も開示可能)

 

参照:http://www.yuuki-law.jp/blog/2018/02/post-10-567656.html

 

この流れは今後も拡大すると予想され、将来、地方銀行の預金口座も弁護士に依頼することで情報開示できる可能性があります。ようは貸金業者は債務名義を取り(裁判をする)、弁護士に依頼することで、あなたの預金のありかを特定することができます。差押命令が送られた時点の預金の残高が差し押さえられます。こうなると預金残高と借金額分が相殺されるだけでなく、時効も簡単に延長されてしまいます。債権者(お金を貸した側)有利な流れになっているのは間違いありません。

 

こまめに預金からお金を引き出しておくことで、相殺は免れることができますが(残高がなければ差し押さえをしても意味がないため)、その時に時効延長までは免れることはできません。

 

時効延長の裁判ですが、貸金返還請求訴訟の裁判を起こすことで、時効は延長します。訴訟の判決が確定してしまうと、その日から10年も時効期間が延長されます。公示送達と呼びますが、これは相手の所在不明で連絡がつかない場合でも訴訟は可能で、欠席裁判で時効を延長することも可能です。

 

ただし消費者金融やクレジットカードでの借金でそこまでのことをするのかという問題もあります。可能性としては0ではないのですが、債権者側も裁判を起こしたり差し押さえをしたり取り立てをしたりするのには時間と費用がかかります。あくまでビジネスとして利益を生むためにやっていることですから、お金の回収の見込みがない者よりも回収の見込みのある者を優先的に取り立てをしていきます。

 

債権者側としては回収できる見込みのある者から優先的に取り立てをし、もし職場を特定しており、職が上場企業勤めなど安定した収入があると見込まれた場合は、経費対効果を考えて十分効果がある場合のみ差し押さえをします。借金総額が大きい場合は時効延長を繰り返していつか回収を図る債権者もいます。すべてはケースバイケースです。

 

たとえば5社から借金をしており、5年間逃げ続けて、1社のみ時効は成立していなくて残り4社は成立していた、といったケースもあります。こればかりは債権者の判断となりますので、どうなるかはわかりません。

 

もし、現在最後に返済してから5年間が経過している借金が複数ある場合、弁護士に相談してみるとよいです。時効延長されているかどうか調べてくれ、時効が成立している借金については時効の運用を行ってくれます。時効が成立していない借金については債務整理などで借金整理をしてくれます。

 

ちなみに借金というのは時効が経過しただけでは時効は成立しません。時効の運用を行う必要があります。自分で行う場合は相手方に対して、「時効期間を経過しているので時効を援用する。時効を援用したので債務は消滅した。そのため支払義務がなくなったので以後は請求しないように」という内容の内容証明郵便を相手方に送付すればOKです。1通は自分が保管し、1通は郵便局が保管し、1通は相手方に送付します。合計3通用意します。

 

 

 

借金返済に困ったら取り立てを完全無視するか専門家に相談する

以上のことから、やはり夜逃げをしても何も解決しないことがわかります。夜逃げするくらいなら今の生活のまま、取り立てを完全に無視しておいた方がよいと思います。わざわざ住所を変更する必要性は一切ありません。お金の貸し借りについて刑事事件として扱われることはありません。

 

まず確認すべきは貸金業者はあなたの職場を正確に把握しているのかどうかです。申し込み時の職場と今の職場が違い、職場変更も知らせていないケースでは知られていません。申し込み時と今の職場が一致しているケースでは知られています。

 

債権者が債務者に対してできることは限られており、たとえば手紙や電話での取り立ても、自宅訪問も、極論すれば完全無視しておけばそれまでです。生活に必要なお金まで借金返済に回す必要はありません。

 

債権者が督促でできることで唯一マークすべき点は前述した通り「給与差し押さえ」と「預金差し押さえ」です。この2点のみしっかりとマークするようにします。あとの取り立ては完全無視を貫いておけばそれまでです。預金についてはこまめに残高を引き出して口座を空にしておきます。口座が空であれば差し押さえをしても意味がありません。

 

給与差し押さえは各期間ごとに支払われる給与の4分の1に相当する部分のみについて差押えが出来ることになっています。職場にも借金滞納の事実が知られます。

 

職場を特定されているケースでは給与差し押さえの恐れがあるのですぐに弁護士や司法書士に相談するようにします。弁護士や司法書士に相談すると受任通知を送ってくれ、代理人として全て債権者と連絡を取りあってくれるので、差し押さえを取り下げる交渉をしてくれ、予防してくれます。

 

職場を特定されていないケースでは給与差し押さえの心配はありませんから、預金だけは常に空にしておきます。今の仕事を続け、お金を貯めて、債務整理をするとよいです。やはり法的な手続きによって一度借金を免除にしてもらうのが一番です。自己破産をすれば今ある借金は全額免除(0円になる)となります。夜逃げをして5年間肩身の狭い思いをして逃げ続けるくらいなら、今の督促は無視して、その間にお金を貯め、自己破産をした方がずっと楽になります。

 

自己破産をするのには同時廃止ですと約30万円必要です。これについては多くの弁護士事務所で分割返済が認められており、3ヵ月〜半年間で支払っていきます。6か月で分割支払いする場合はだいたい1ヵ月の支払いは5万円です。このお金は仕事をしてなんとか捻出する必要があります。一度弁護士や司法書士と相談し、国が認めた方法で借金整理をした方がよいです。

 

債務整理をするデメリットはほとんどなく、普段の生活に何も支障はありません。いくら借金地獄に陥ったからといって、日本の法律では「健康で文化的な最低限度の生活」が守られています。

 

いまでは無料相談をしてくれる弁護士事務所がたくさんあります。多くの事務所で初回無料ですので、まずは気にせず自分の状況を素直に相談してみましょう。貸金業者と直接交渉してくれ、無理のない借金返済のための道筋を示してくれます。

 

 

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