自己破産中(前後)の遺産相続について

自己破産の手続き中(前後)に遺産相続した財産は回収される?

自己破産をしたとしても遺産相続は問題なくすることができます。ただし問題となるのが「遺産相続するタイミング」です。ようは自己破産をする時に、遺産相続されて遺産が手元に入ってくるタイミングによっては、全額回収されることがあるのです。具体的に自己破産をする時に遺産相続されるタイミングを以下にわけて解説します。

 

・破産申し立て前に遺産相続があったケース
・破産手続の開始決定前に遺産相続があったケース
・免責決定後に遺産相続があったケース

 

そもそも自己破産とはどういった流れで手続きが進むのか?

そもそも自己破産の手続きの流れですが、以下の流れで進んでいきます。

 

@弁護士に初回相談をする
A弁護士に正式依頼する(受任通知の発送)
B破産申し立てをする
C破産の面談
D破産手続きの開始決定
E免責の面談
F免責の決定

 

まずは弁護士に初回相談をして借金の状態など細かく伝えていきます。それを元に弁護士が適切な債務整理を選んでくれ見積もりを出してくれます。自己破産が妥当であると判断されれ、自己破産の手続きになります。見積りを聞いたうえで依頼するかどうか決めます。正式依頼すると弁護士は各債権者に受任通知を送ります。受任通知を送られて債権者はその後一切債務者に取り立てができなくなります。借金返済はストップしますから、この時から弁護士費用を分割払いしていきます。

 

ある程度弁護士費用の積立てが終わり、必要書類の提出も済んだら、弁護士が代理人となって管轄の裁判所に出向き破産の申し立てをしてくれます。この裁判官と代理人弁護士が面談をし、同時廃止が妥当か管財事件が妥当か話し合い手続き方法が決まります。次に破産の申し立てをします。そして再び裁判官の免責の面談を行い、最終的に裁判官が免責が相応しいかどうか決めます。免責決定がされたら借金は免除となります。

 

破産の申し立てをしてから免責決定がされるまで、同時廃止なら3ヵ月〜4ヵ月、管財事件なら半年程度かかります。

 

・破産申し立て前に遺産相続があったケース
破産申し立て前に遺産相続があったケースですが、このケースについてはまだ破産の申し立てをしていないので手続きはスタートしていません。遺産が相続されて、債務者の手持ちのお金が変化するはずです。もし自己破産でなくてもこの借金問題を解決できる場合は自己破産はしない方向になります。

 

自己破産をしない場合は、「自力で返済する」か「任意整理する(利息を0%にして3年で分割返済)」か「個人再生(借金1/5にカットして3年の分割返済)」の3つのどれかになります。もし自己破産の弁護士費用を払ってしまった場合ですが、着手金は戻ってきませんが、それ以外の費用はすべて戻ってきます。弁護士費用は最初に支払う着手金と成功報酬の2つに分かれていますが、大部分は戻ってくることになります。それか手続きが変更される場合は、今まで払った費用は新しい手続きの費用にしてもらえます。

 

・破産手続の開始決定前に遺産相続があったケース
破産開始決定前までに取得した財産については、原則99万円までの現金を除いてはすべて破産財団に組み込まれてしまいます。自己破産は債務者の財産をすべてお金に換えて債権者に差し出す代わりに借金を免除してもらう手続きです。当面生活に必要な99万円までのお金を除いてはすべて失ってしまうのです。

 

破産手続の開始決定前に遺産相続があったケースでは、その財産は、手元に99万円以下まで残して、残りはすべて失ってしまいます。

 

もし遺産相続された金額で借金を返済できる場合は自己破産の取り下げをするとよいです。取り下げについては以下と明記されています。

(破産手続開始の申立ての取下げの制限)

第二十九条 破産手続開始の申立てをした者は、破産手続開始の決定前に限り、当該申立てを取り下げることができる。この場合において、第二十四条第一項の規定による中止の命令、包括的禁止命令、前条第一項の規定による保全処分、第九十一条第二項に規定する保全管理命令又は第百七十一条第一項の規定による保全処分がされた後は、裁判所の許可を得なければならない。

破産申し立てをした場合でも、破産手続きの開始決定する前まででしたら裁判所に、申立の取下げ書を提出すれば、自己破産の申立を取り下げることはできます。必ず担当の弁護士に遺産相続されたことを伝え、その上でしっかりと相談し、取り下げて別の返済方法が妥当な場合は、担当の弁護士に取り下げてもらうようにします。

 

このケースでは自己破産の取り下げはできますが、弁護士費用の着手金分は返ってこない可能性が高いです。

 

・免責決定後に遺産相続があったケース
自己破産の免責決定がされればこれまでの借金は全額免除となります。0になるということです。これで破産手続きは完了となります。免責決定がされた後の遺産相続については回収されることはありません。全額そのまま受け取ることができます。免責決定後の遺産相続について制限は一切ありません。

 

自己破産と遺産相続まとめ

破産手続の開始決定前までに取得した財産についてはすべて破産財団に組み込まれることになります。破産手続の開始決定前までに遺産相続があったケースでは、自己破産以外で返済できる場合は自己破産の取り下げをして破産以外の方法で返済していくようにします。債務整理の手続きを変更するということです。

 

破産手続の開始決定後に取得した財産についてはそのまま手元に残すことができます。破産財団に組み込まれることはありません。破産手続の開始決定後に手に入った遺産相続についてはそのまま全額手元に残しておくことができます。そして免責決定がされれば無事これまでの借金は全額免除となります。

 

このように「破産手続の開始決定前か後か」というタイミングが分かれ目となります。この点に注意しておくとよいです。やはり理想としては免責決定がされて借金が0に戻った後に遺産相続されることです。もし今遺産相続されそうなときは、できるだけ早く自己破産手続きをしておいた方がよいと言えます。